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試合は、誰のコンテンツなのか(2026年4月1日発行)

試合は、誰のコンテンツなのか

イングランドの名門サッカークラブ、マンチェスター・ユナイテッドには、MUTVというクラブ公式の映像サービスがあります。

クラブが自分たちで運営している配信サービスで、選手インタビューやドキュメンタリーに加えて、試合映像も見ることができます。

ここで気になるのは、試合がフルゲームで残っていることです。

過去の試合も、短く編集された映像ではなく、試合全体をそのまま見ることができます。

これは、率直に言って羨ましい状態です。

自分たちの試合が、きちんと残っている。あとから見たい人が、見られる。その状態自体に価値があると思います。

ただ同時に、すぐに別の感覚も出てきます。

それは、あれはマンチェスター・ユナイテッドだからできるのではないか、という感覚です。

世界的な知名度があり、強いブランドがあり、映像を成立させるだけの資金も人もいる。そうした前提があるクラブの例を、そのまま自分たちに重ねることはできません。

だからこそ、別の問いが残ります。

試合は、誰のコンテンツなのでしょうか。


試合はクラブだけでできていない

スポーツの試合は、クラブだけで生まれるものではありません。

まず、相手クラブがいます。そして多くの場合、試合はリーグや大会の枠組みの中で行われます。

さらに、映像がある場合には、それを誰が撮影し、誰が編集し、誰が配信するのか、という問題もあります。

試合という出来事には、少なくとも複数の主体が関わっています。

相手クラブ。リーグや大会。制作や配信の主体。

だから、試合映像を単純に「クラブのもの」と言い切ることはできません。

もちろん、試合はクラブがプレーすることで生まれます。ただ、クラブ単体で完結するものではありません。

この前提を飛ばしてしまうと、試合映像の話はすぐに雑になります。


同じ試合映像でも、成り立ちは一つではない

実際、試合映像の主体は一つではありません。

たとえば国際大会であれば、その映像は大会主催者のコンテンツとして扱われます。リーグ戦であれば、リーグの配信基盤の上で見られることがあります。大会によっては、制作会社や配信事業者が前に出ることもあります。

同じ「試合映像」でも、誰が持ち、誰が見せ、誰が管理しているのかは、場面ごとに違います。

見る側からすると一つの映像でも、成り立ちは一つではない、ということです。

ここを整理しないまま、「クラブも試合を配信すればいい」と考えると、現実とのずれが大きくなります。


それでも、試合を残す意味はある

それでも、試合配信や試合アーカイブには意味があると思っています。

理由は単純です。

スポーツクラブの中心には、やはり試合があるからです。

どれだけ周辺に企画があっても、発信があっても、商品があっても、クラブの中心にあるのは試合です。

その試合が外から見えない。終わったら消えていく。あとから触れられない。

そうなると、競技の存在自体が見えにくくなります。

試合は一回限りです。その一回を映像として残すことには、記録としての意味があります。

同時に、それは競技の入口を増やすことでもあります。

会場に来られなかった人。あとから関心を持った人。その人たちが触れられる形があるかどうかは、小さくない差だと思います。


見られることと、回ることは違う

女子フットサルでも、試合映像に触れられる機会は以前より増えています。

ただ、それをもって市場が成立しているとは言えません。持続可能な仕組みができている、ともまだ言えないと思います。

今、確認できるのは、少なくとも一部の試合が配信され、見られる状態になっている、ということです。

この変化自体は前進です。

ただ、その前進をどう評価するかは、もう少し慎重でいたいと思っています。

見られることと、回ることは違う。配信されていることと、事業として成立していることも違う。

そこは分けて見ておく必要があります。


いまのヴォルフェ北海道にあるもの、ないもの

では、ヴォルフェ北海道はどうか。

現状はとてもシンプルです。

チームの内部では、試合映像を使っています。戦術確認や振り返りのための記録です。

ただ、それはあくまでチームのための映像です。応援してくださる方に向けた映像コンテンツとして整えられているものではありません。

必要性がないとは思っていません。むしろ、あった方がいいと思っています。

ただ、ここまで書いてきた通り、試合映像は単純な話ではありません。

相手がいる。大会やリーグの枠組みがある。制作にもコストと体制がいる。どこまで公開していいのかという判断もある。

つまり、やりたいと思えばすぐできる種類の話ではない、ということです。

少なくとも今のヴォルフェには、それを継続的に回す仕組みはまだありません。


小さく残していくところから

だからといって、何もできないとも思っていません。

いきなり試合配信に向かうのではなく、もっと小さいところから始める方法はあるはずです。

たとえば、選手インタビューを映像で残すこと。試合後の言葉を、短くても蓄積していくこと。その時点で何を考えていたのかを、少しずつ残していくこと。

試合そのものではなくても、クラブの時間を残すことはできます。

むしろ今のヴォルフェに必要なのは、そういう始め方かもしれません。

できる範囲で残す。残せる形を増やす。その積み重ねの先に、試合映像の扱い方も見えてくる可能性があります。


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