プレビューモード

まだ語らない、という選択

語らないというよりは、語れない。語ろうとすると、なにかが嘘になってしまう気がするから。

たとえば、「このチームには、どんな選手がいるのか?」という問いに、ちゃんと答えたいと思っています。SNSでも、現地でも、何度か訊かれてきました。

わたしたち自身も知ってほしい気持ちはあります。伝えたい場面はいくつも。誰かの目にふれてほしい横顔や、汗のにじみ方や、ボールを蹴る音も。

でも、その「伝えたい」は、ほんとうは誰のための言葉なのでしょうか。


伝えられない理由は、たぶんいくつもある

ひとつの理由は、選手との関係が「まだそこまで行っていない」こと。

もちろん「情報を出してもいいですよ」と言ってくれる選手もいます。それはうれしいことです。

でも、その言葉をそのまま発信の許可証のように扱ってしまうのは、ちがうと思ってしまう。

プレーすることと発信される存在になることは、似ているようで別のもの。

それを“まだわからない”まま進めるのは、ちょっとこわいです。


わたしたちは、今はまだ、選手を広告塔にはしない

応援してもらうために「見せる」のではなく、選手たちとクラブのあいだにちゃんとした関係性を育てる。

何をどこまで出すのかは、「発信の可否」ではなく「共同体としての輪郭」の話。

だから、今はまだ語らない。

語らないことでしか守れないものもあるかもしれない、と、今は考えています。


それでも、届けたくなる

もちろん迷いはあります。

たとえば夕方の体育館。走る音と、止まる音と、黙ったまま動いている選手たちの気配。その一瞬に「ああ、これはヴォルフェだ」と感じるときがあります。

その空気を、誰かに届けたいと思ってしまう。

でもそれを「発信」するには、まだわたしたちは、準備ができていないと思っています。


少しずつ「ともにつくる」かたちへ

すこしずつ関係は変わってきています。練習の密度も、会話の質も、チームとしての空気も。

ただのチームではなく、職場でもなく、友人でもない、共同体の輪郭。

発信とは、その輪郭のなかに誰を迎え入れるかという設計です。

だから、時間をかけています。


語らないこともまた、語っている

この状態がいつまで続くかはわかりません。

語りたい。でも語れない。だから今は、語らないことを記録しておきます。

わたしたちは、そういうクラブでありたいと思っています。

どんなクラブが信頼されるクラブなのか。

その答えは、関わってくれるあなたとのあいだに育っていくものなのだと、

今は思っています。