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展示から日常へ

札幌のまちなかで開かれたNoMaps2025の場に、私たちは小さな扉を据えました。
そこではスポーツとアートが静かに重なり合い、ひとつの時間が生まれました。
その時間から生まれた表現を、ただ展示のままに留めず、日常の風景へと届けたいと考えています。

服や持ちものを通して、展示会場での余韻が日々の暮らしに息づくこと。

そして何より、「買う」という行為が誰かを支える具体的な手触りに変わる可能性を、ここで問い直したいと思います。

これから、私たちの小さな実験を順を追って記していきます。その歩みに耳を傾けていただけたら幸いです。

背景――なぜ「日常へ」届けるのか

ヴォルフェ北海道は、2022年に創設された女子フットサルクラブです。拠点は旭川近郊・比布町にある旧蘭留小学校。
「スポーツの力で、あらゆる人々の可能性を開く」というミッションを掲げ、競技の枠を超えて活動を重ねてきました。

その挑戦の一つが、札幌で毎年ひらかれるクリエイティブの祭典「NoMaps」への参加です。
2023年から三年連続でその場に立ち続け、スポーツとアートを交わらせる実験を続けてきました。
私たちにとって展示はゴールではなく、関わりの入口です。作品を前に立ち止まる沈黙や、交わされる問いかけの先にこそ、新しい関係が生まれると信じています。

だからこそ、展示という一瞬の場に終わらせるのではなく、日常に届ける形を模索してきました。
纏い、手に取り、生活の風景に差し込む。その延長線上にこそ、スポーツとアートが人々の暮らしに根づいていく道筋があると考えています。

日常に宿す――纏うという体験

展示会場で立ち上がった作品は、その場限りの光景として消えていくものではありません。
身に纏うことで日常に小さな余白を生み出し、暮らしの風景に静かに入り込んでいきます。
一枚の服がある人にとっては会場での出会いを思い出すきっかけとなり、またある人にとっては新しい問いを抱くきっかけになっていくかもしれません。

本当は応募いただいた23点すべてを日常へ歩ませたかったのですが、現実には9点を選ぶしかありませんでした。
その判断には責任ともどかしさが残ります。
それでも、選んだ9の作品は、優れているからではなく、今の私たちが託すと決めた結果として歩み出すものです。
選びきれなかった14の思いもまた、次の挑戦への約束としてここに刻みたいと思います。あらためて、心より感謝申し上げます。

纏うという行為は、ただ身につける以上の意味を持ちます。
展示で生まれた熱や沈黙が生活の中で新しいかたちを取り直し、再び誰かと共有される。
ヴォルフェのような、まだまだこれからのクラブで、女子フットサルというある種辺境にいる存在でも、そうした波を生み出せるのかどうか。

その可能性を確かめる小さな実験として、作品を日常へ送り出してみたいと思います。

応援消費という挑戦

今回の取り組みは、「何かを買う」という行為を、応援のかたちへと変える挑戦です。
売上の一部は作品を生み出した制作者に還元されます。
その循環があるからこそ、作り手は次の表現へと踏み出すことができます。

受け取る人にとっては、一枚の服を手にすることがクラブや制作者の活動を支える行為に変わります。
「ただの消費」ではなく「誰かの挑戦を共に支える一歩」にしていきたい。
小さな一枚を手にすることがやがて大きな流れにつながっていく――その可能性に挑戦していきます。

この仕組みは、クラブが掲げるWOELFE PACK(ヴォルフェ・パック)のゴールとも地続きです。
「応援が循環する仕組み」を実装する社会実験。
作品を手にする一人ひとりの選択が、その挑戦を形づくっていきます。

ご案内――期間と方法

今回の作品は期間限定で販売いたします。
一般販売は、2025年10月1日17:00から12月31日23:59までの予定です。
また、ヴォルフェ・パックのメンバーの皆さまには先行して9月27日17:00から申し込めるようにしています。
会員先行期間中にお申し込みいただいた場合は、送料無料でお届けできればと思います。もちろんクリエーターに還元するお金はかわりません。

あなたへ

この取り組みは、大きな成果を誇るものではありません。
けれど展示の余韻を日常に届けたいという思いをみんなでかたちにする小さな一歩です。
そして同時に、スポーツとアートの交差点から生まれた大きな挑戦でもあります。

選択の責任やもどかしさを抱えながらも、歩みを止めることはありません。
日常のなかに作品を宿し、応援の循環を確かめていきたいと思います。

どうか、この歩みに立ち会っていただけませんか。
静かに、そして確かに広がっていく挑戦の一部になっていただけたら、それに勝る幸せはありません。