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集い、輝き、そしてゴールへ by N.あつめ

日常のワンシーン

夜、部屋の隅に置いたガラスのコップが、
ふと、思いもよらない方向へ光を返すことがあります。

街灯の色なのか、画面の残光なのか。
わずかな粒が手元の影に触れ、
その一部だけが静かに浮き上がる。

その光は、形を主張するほど強くはなく、
けれど、消えてしまうには惜しいほどの“気配”をまとっています。

忙しさに押し流されるように過ぎていく一日の中で、
こうした小さな光に気づく瞬間だけ、
自分の時間がふっと減速するように感じることがあります。

未来のどこかで、誰かが蹴ったボールの軌道や、
街の壁に映える色の響きが混ざり合う情景に、
ほんの少しだけ触れたような。

そんな微細な揺らぎが、
今日の終わり際に、そっと留まっていました。


作品の輪郭

N.あつめさんの「集い、輝き、そしてゴールへ」には、
未来の都市公園を思わせる光の層が重なっています。

プロジェクションマッピングの明滅と、
ストリートアートの自由な線。
そのあいだを縫うように、
青いユニフォームの動きが浮かび上がる。

静止画でありながら、
フットサル特有の“加速する一瞬”が切り取られ、
電光色の粒子がその軌道に触れています。
それは光が走るのではなく、
動きの記憶に光が寄り添っていくような印象です。

「交差し、適応し、継承する」というテーマに沿って、
作品の中では〈伝統〉と〈現代〉が同じ平面の中で呼吸しています。
青の持つ落ち着いた深さのうえに、
電光色の明るさがふっと跳ね、
地域の歴史と、これからの都市の表情が
ひとつの画面に共存している。

光の粒子は、“未来への希望”として置かれています。
線や色の勢いに飲み込まれることなく、
むしろ、その中心に静かにとどまる灯りのように描かれている。
明るさよりも、そこに立ち上がる“新しい視点”に
重心があるように見えます。

そしてタイトルにある「ゴール」は、
ポストのことでもあり、
未来に向けて伸びていく“目標点”のことでもある。
作品の画面は、その二重の意味を包み込むように広がっています。


この作品がつくった時間

展示会場の一角、
この作品の前だけ、空気の温度が少し変わるように感じました。

会場全体に満ちていた白い光が、
パネルの電光色に触れると、
その部分だけがわずかに軟らかく反射する。
まるで、画面の中の粒子が外の光を受け取り、
ひと呼吸だけ膨らんだように見えました。

立ち止まる人は多くありません。
けれど、足を止めた人の視線は長く、
画面の奥で交差する線のリズムを
じっと追いかけていました。

青いユニフォームが描かれた中央付近は、
会場の動きとは別の速度で時を刻んでいたように思います。
周囲のざわめきとは無関係に、
そこだけ静かな“未来の気配”が差し込む。

作品の前を離れていく人の後ろ姿に、
なにかが引っかかったまま歩き出すときの、
“わずかな間”が残っている。

強く訴えるのではなく、
心の奥に小さな光を置いていくような、
そんなふるまいをしていた作品だと思います。


なぜこの作品を日常へ歩ませると決めたのか

23点の応募作品が並んだとき、
どれもがそれぞれの角度から
「フットサル」や「地域」や「未来」を見つめていました。

その中で、この作品は、
都市の光と、人の動きと、地域の息づかいが
ひとつの平面の上で共存していた点が
他にはないものでした。

青いユニフォームと電光色の対比は、
スポーツの持つ“変わらない軸”と、
地域がこれから迎えていく“変化の速度”の
どちらも否定せずに、同じ温度で置いているように見えました。

ヴォルフェが探している未来も、
静かで慎重な変化と、
一気に景色を変えていくような挑戦の
その両方のあいだにあります。

この作品が描いていた都市公園の光景は、
いまの私たちにとって“現実の延長線上にあり得る場所”として
自然に立ち上がってきた。

地域とともに進化(深化)していくという視点は、
クラブがこの一年で向き合ってきた問いと重なります。
日常を拡張する挑戦と、
地域に根ざした時間の積み重ね。
その二つを同じ画面で扱っていたことが
選定の理由のひとつでした。

タイトルにある「ゴール」は、
単なる得点の場所ではなく、
“どこへ向かうのか”という問いに近い。
その静かな構造が、
クラブの歩みに寄り添ってくるように感じたのです。


終わりじゃない消費

作品が展示を離れ、
誰かの日常へと歩き出すとき、
その光は別の時間をまとい始めます。

電光色の粒子は、
都市の壁でも、会場のパネルでもなく、
生活のどこかにそっと置かれ、
その場所の空気と混ざりながら
静かに呼吸を続ける。

買うという行為の先に、
もうひとつの時間が生まれるのだとしたら、
それは“応援”や“支援”とはまた違うかたちの、
小さな創造に近いのかもしれません。

ヴォルフェが大切にしているのは、
展示で終わらせず、
作品が日々の暮らしの中で
見えない対話を続けていくこと。

光の粒子が未来を象徴するように、
その作品を纏う人や、部屋に置く人の中にも、
次の視点や気づきが生まれていく。

消費を終わりにしない構造は、
私たちの挑戦を
細く、けれど確かに前へ押し出してくれる
ひとつの風のようなものだと思っています。


作品名:集い、輝き、そしてゴールへ
作者名:N.あつめ

本作品は、ミライの都市公園でプロジェクションマッピングと融合したフットサル、ストリートアートを描き、地元コミュニティに根ざした活動として旭川の魅力発信を目指します。テーマ「交差し、適応し、継承する」との関連では、フットサルのダイナミックな動きと背景のグラフィックアートが交差し、青いユニフォームと電光色の色彩が伝統と現代の融合を示します。適応は、地域と共に進化(深化)する旭川の姿を表現し、継承は地元の良さを次世代に引き継ぎ、光の粒子で未来への希望を象徴します。この光は明るいインスピレーションを呼び起こし新たな視点を提供します。タイトルのゴールはゴールポストと最終的な目標点の意味をかけています。