まだ誰もいない場所にどんな構造や言葉を置けば、それは社会に存在できるのか(2025年6月15日発行)
2025/06/15「クラブをつくってもいい」と思えた瞬間
なぜ僕たちはこのクラブを「つくってもいい」と思えたのか。
その最初の判断について書きます。
制度よりも前に、選手よりも前に、
この場所に名前を与えることが果たして可能なのか──
そう問いながら始まった、最初の判断です。
ここでいう「問い」とは、組織の名称や競技の選定といった表層のことではありません。
僕たちが直面していたのは、
「まだ誰もいない場所に、何を置けば、そこに関係性が生まれるのか」
「社会に接続する場の“かたち”として、何を選ぶのか」
「自分が“存在していい”と思える線を、どこに引くのか」
そうした構造的で、本質的な判断のことです。
選手のいないクラブから始まった
クラブの創設は2022年、法人登記を行ったのは2023年。
けれど、競技チームとしての活動を始められたのは2025年に入ってからでした。
選手がいない。試合もない。支援もない。
あるのは、自治体と協定を結び、廃校となった小学校の校舎を活用した活動拠点と、数人の立ち上げメンバー。
その空間に、なにを呼び込むのか。
僕たちは、「関係性」から問い直すところからクラブを始めました。
なぜ北海道・旭川だったのか
僕自身は、旭川に地縁があったわけではありません。
それでもこの地を選んだのは、「誰もやっていない場所でやる」ことに意味があると思えたからです。
都市の真似ではなく、プロの模倣でもなく、
ここだからこそ成立する“生活に接続したクラブ”を模索できる風土がこの土地にはあると感じました。
もうひとつ、背中を押してくれたものがあります。
この地域にはすでに、男子プロバレーボールのクラブ「ヴォレアス北海道」が存在していて、
スポーツをただの競技としてではなく、地域の構造と結びつける実践を重ねてきた歴史があります。
僕はその活動を、すぐそばで見る機会がありました。
もちろん、僕たちが始めようとしているのはまったく別の構造ですが、
「スポーツが社会に作用しうる」という確信のようなものを
たしかにこの土地の空気から受け取っていた気がします。
なぜ「女子」だったのか
女子スポーツは、まだ制度的にも文化的にも未整備です。
支援が届きづらく、発信の場も限られている。
でもだからこそ“これから設計していける”という視点に立てる領域だと思いました。
既存の構造に適応するより、
自分たちの構想に合わせて必要なものから整えていける。
そういう立ち位置に立てるのが「女子」という選択でした。
なぜ「フットサル」だったのか
北海道は冬が長く、外でサッカーをする環境が限られます。
その分、フットサルが「競技」と「日常」をつなぐ可能性を持っていると感じました。
また、フットサルそのものがまだ構造として未成熟であることも大きな要因です。
完成された競技ではなく、これから価値や意味づけを作っていける。
スポーツという枠組みを“自分たちの仮説”とともに設計していける。
そうした開かれた競技性がこのクラブには必要でした。
「ヴォルフェ」という名前に込めたこと
WOELFE(ヴォルフェ)というのは、ドイツ語で「オオカミたち」という意味です。
群れでありながら、個でもある。
強さとしなやかさ、連帯と孤独のあいだにある存在。
その姿に、この名前を与えました。
なぜ僕たちがこのクラブをやるのか
スポーツは、ただ観るものでも、勝ち負けの道具でもありません。
「持つこと」で社会に接続する回路になりうる、そう信じています。
制度や空間、仕組みや関係性を設計する仕事をしてきた立場として、
その力をスポーツの現場で、ゼロから立ち上げてみようと思いました。
それがこのクラブを始めた動機であり、
僕が「この判断を、正解にしていきたい」と願っている理由です。
※本稿は、メールマガジン「この判断を、正解にするために。あなたと紡ぐ、女子フットサルクラブ経営の話」の記事をWOELFE PACKメンバー向けに再編集したものです