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「存在しないチーム」が、まつりを成立させた日(2025年8月14日発行)

「存在しないチーム」が、まつりを成立させた日

これは、女子フットサルクラブ「ヴォルフェ北海道」が、まだチームとして成立していなかった時期に行った、ひとつの実践の記録です。

2024年、比布町・旧蘭留小学校を会場に開催した「らんるまつり2024」。

その設計と、開催後に残った問いについて書き残します。


構造から設計した「らんるまつり2024」

「らんるまつり」という名前だけを見ると、まちの年中行事のように思われるかもしれません。

実際、かつてこの地域には「蘭留まつり」と呼ばれる催しがあったと聞いています。

いつしか行われなくなり、今は記憶の中にだけ残っているおまつりです。

今回のイベントを企画するにあたり、その名前を使ってよいかを比布町の町長に相談しました。

そして、快く了承していただきました。

もう一度、「まつり」という形式が、地域でどんな意味を持てるのか。

それを、比布町というまちと一緒に試してみる場でした。

ヴォルフェ北海道というクラブには、まだ選手がいませんでした。

監督も、リーグ所属も、ユニフォームすらない。

それでも、クラブとして「まつりを主催する」という選択をしました。

イベントを通して何かを広めるのではなく、「クラブとは何か?」を、自分たちの手で問う場にしたかったからです。


数字の設計に、クラブの思想は現れる

資金は、クラウドファンディングと補助金の組み合わせで構成しました。

これは単なる資金調達の手段ではありません。

どの層から、どのタイミングで、どんな理由で支援が集まるのか。

その分布と動機を含めて、「関係性のマッピング」と捉えていました。

支援額を集めることが目的ではない。

支援が「どう集まるか」を設計対象とすること。


クラブ不在のまま、試合を組んだということ

このイベントには、ヴォルフェ北海道の所属選手はいませんでした。

というよりも、当時はまだ誰ひとり所属していなかった。

にもかかわらず、会場ではエキシビジョンマッチを開催しました。

トップレベルの女子フットボーラーたち、あしざるFC、地元中学生プレーヤーたち。

そのすべてが、ゲストとして場に立ち、地域とまっすぐ向き合ってくれました。

プレーは、予想以上に熱を帯びていました。

同時に感じたのは、立場の不在がもたらすねじれです。

クラブの名前を掲げながら、その中心にクラブの選手はいない。

主語にならなかったクラブが、この熱をどう引き受けるのか。


問いをつづける責任

このイベントを「やってよかったか」と問われると、今でも即答はできません。

ただ、「このやり方でも成立する」という事実が残りました。

この判断を、一度きりで終わらせたくはありません。

火は、たしかにともりました。

あとは、その火をどう扱うかです。

それは──

所属選手がゼロの状態で。
地方の小さな学校を会場にして。
数百万円規模の予算を組み。
全国から人を呼び。
地元の人と一緒に空間を編み。
そして、来年に向けた動きが静かに残っていった。

普通なら、矛盾にしか思えない構成です。

それでも、この一連の出来事は、確かに「成立」しました。

けれど、成立しただけでは終わらせたくなかった。

「一過性の盛り上がりだったね」と言われても、否定はしません。

ただ、ここで終わってしまったら、この判断は「一度やってみただけ」になってしまう。

そうじゃない。

僕たちは、「これを正解にする」つもりでやりました。

それは、未来に向けた判断です。

このやり方で、もう一度やる。

あるいは、誰かに引き継ぐ。

もしくは、この記録をもとに、まったく違う仕組みを組みなおす。

その選択肢を生むことこそが、この判断を正解にしていく行為だと思っています。

だから、こうして書きました。

このイベントの裏にあった判断の数々と、そこから残った問いのいくつか。

火は、たしかにともりました。

そして、その火がどこまで届くかは、これから僕たちがどう動くかにかかっている。

そう思っています。


※本稿は、WOELFE PACK(月額1,000円〜)向けに配信した記録を、公式サイト掲載用として再編集したものです